12.22.2012

ワイルドだろ

今年の最後の仕事で望遠レンズが必要になったので、
AF-S NIKKOR 600mm f/4を用意した。

iPhone5

2倍のテレコンTC-20EⅢで1200ミリになるので、月を狙ってみた。

http://www.flickr.com/photos/nakayama1999/8288194866/in/photostream/lightbox/
(D800E 1200mm 1/400s f/16)

D800Eをパソコンに繋いで、ライブビューで撮影した。
絞りによる解像感の違いを見る為に低速シャッターになるせいもあったが、
何より、ソフトのカメラコントロールプロ2を使って、
モニター上でワンクリックで正確にピントを合わせる事が出来る。
カメラのファインダーでは、AFレンズのピントリングで、
天体撮影できっちりピントを合わせるのがシビアだからである。
今回の月の撮影では意外なことに、絞りを16にしたものが
最も解像度がいいように感じた。
テレコンのせいなのかどうかは、よくわからない。

絞り開放付近での性能が少し心配になったので、
例によって多摩動物園にフィールドテストに向かった。

動物園にいる動物達が、それぞれどんな生い立ちで、
どんなことを思いながら生きているのか、いつも考えさせられる。
視線は虚ろで鉄製の壁に体当たりを続ける鹿、
プレデターのような雄叫びをあげ続ける生傷だらけのオスライオン、
牙を抜かれたようにぐうたれて寝てばかりのオオカミ、
ものすごい鎧を着て、夢遊病のように同じところを歩き続けるサイ、
なんでもかんでも「かわいい」と評される動物園の動物達の、
視線の先に何があるのか、とても興味深い。

「ワイルドだろ@多摩動物公園 Dec.20 2012」
 by Nikon D800E, AF-S NIKKOR 600mm f/4
http://www.flickr.com/photos/nakayama1999/sets/72157632303677602/show/

ライオンだけが、テレコン装着による1200ミリ。
残りは、全て600ミリ。
心配していた絞りは、5.6か6.3あたりが最も美味しそうである。
VR(ブレ防止)の効果はたしかに感じられたが、
撮っている最中に超望遠のせいかファインダーがずれて見えることがあり、
狙いがはずれる感じがして、気持ち悪い。
仕事の際は、どうせそれなりのシャッタースピードで切るので、
VRはオフにして臨んだ方が、ストレスが無いと思う。

このレンズとカメラを一脚に載せて、半日(5時間)園内をくまなく歩いたが、
データは32GBのカードを2枚使いきってRAWのみ1450枚。
さすがに全身の筋肉がパンパンになってしまった。
もちろん、定価150万円レンズでもあり、決まった時の性能は素晴らしい。
ただ、600ミリだと長過ぎるシーンもあって、
営業中に引きで撮ろうとすると他のお客さんに迷惑をかけてしまう。
何を狙うかにもよるが、もしかしたら70-200あたりのズームで
テレコンを使って400ミリくらいのほうが身体にもいいかもしれない。
D800Eの3600万画素なら、500ミリ換算位にトリミングしても
全く問題はないだろう。

一つ気になったのは、園内に喫煙所があまり無い事だった。
非喫煙者の方はお笑いになるかもしれないが、
一服することによって、自分の中の引き出しをひっくり返す時間が出来たり、
新たな狙いどころを閃くことも多い。
煙草くらい吸いながら、スローな写真を撮っていきたいと思っている。

最後におまけの一枚。
トラがすれ違い様に、威嚇し合ったので発作的にシャッターを押した。
自宅に戻り画像を確認していたらトラパンチが写っていた。
あの早さで、この手でビンタを食らったとしたら、、、、

「ワイルドだろ」

iPhone5 モニター撮り

12.05.2012

五代目 中村勘九郎

ネット上で見た「勘三郎さん死去」の文字を見て、
思わず「えっ」と大きな声を出してしまった。
とっさに名前の勘違いであってほしいと思いながら、
調べてみたら、五代目勘九郎さんだった。
とても、悲しい気持ちになった。

1998年、大河ドラマ「元禄撩乱」の撮影がスタートした頃に、

月刊現代の「貌」シリーズの連載で撮影に伺った。
歌舞伎役者であるという先入観以外は特段もっていなかったが、
インタビューや撮影時に感じた人柄に一目惚れしてしまった。
歌舞伎役者の息子という宿命に真っ向から向き合っていながら、
誰に話をするにも、決して偉そうに振る舞うことなくフランクに接して、
集まった人達に気持ちよくそれぞれの仕事をさせてくれる
素晴らしい人生の先輩だった。
同時に、大工の頭領のような肉体労働者的べらんめぇなエネルギーと、
アーティストとしての繊細な感覚を合わせ持っているような、
世界のどこでもこのまま通用するジェントルマンだと感じた。

Hasselblad 903SWC f8 1秒 EPN

インタビューの中でも触れているが、仕事の話もそこそこに、
「楽しさ」や「遊び」をとても大事に生きていることが
ひしひしと伝わってきて、それがまた最高に素敵だった。

宿命の歌舞伎の世界に、新しい「遊び」を持ち込みながら、
精力的に仕事をして、恋をして、酒を飲む。

いつか、再び撮影をさせて頂く機会があったら、
勘九郎さんがどんな顔でお酒を飲むのか拝見したかった。
かっこいい「オトコ」がまた一人いなくなってしまった。

Hasselblad 500CM 100mm EPN

先輩に負けないように、楽しく生きなければと思う。


合掌