伊東四郎さんが、主人公の生い立ちをめぐる非常に重要な役柄を怪演されていて、
物語に吸い込まれてしまった。
中井貴一さんの演技もとても素晴らしい。
ネットでニュースを見ていたら、兵庫県の知事がこのドラマを見て
「画面が汚い」「瀬戸内海が青くない」などと発言されたそうである。
なんだか、自分が撮影した写真に対して、
「粒子が汚い」とか、モノクロ写真なのに「海が黒い」とか言われたような
なんとも不思議な気持ちになった。
一昨年の「龍馬伝」と同じく「平清盛」は、
ヘアメイクの柘植さんを人物デザインに据えて、
映像や機材も従来の見易さよりもより臨場感を狙った冒険的なものになっている。
公家や皇族と差別化を図って、武士や町場のシーンでは、
コーンスターチを舞い上がらせて土煙や埃を演出している。
いささか過剰とも思えるようなコーンスターチのせいで
知事さんが「汚い」と言ったのだろうとすぐに理解した。
近年の大河ドラマを通じて、主人公の故郷などが町おこしの重要なきっかけにすることは、
当然のことだとは思うが、純粋に大河ドラマというものを
一つの独立した見世物として楽しむことこそ、正しい姿だと思う。
史実と異なるとか、海が青くないとかではなく、
日本の最高の機材を備える放送局であるNHKが、私達が支払っている受信料を使って、
日本の歴史を思い起こさせてくれる一年間のエンターテイメントを責任を持って作っているんだから
それを単純に楽しめばいいと思っている。
面白ければ毎週見ればいいし、つまらなければチャンネルを変えればいいだけの話である。
地域振興という旗のもとに、何かがコントロールされるとしたら、
今、我々が直面している原発利権のようなことにもなりかねない気がするのである。
伊東四郎さんが、「電線マン」でもなく「ニン」でもない
「院」の役に頭を丸めて臨んだエネルギー満点の姿を撮影したかった。
役者が撮影現場で別の人格になりきっているときの不思議なエネルギーを、
うまく吸い取ったようなポートレートでの連載を是非やらせて頂きたいと思う今日この頃。
雑誌等で、そんな企画がありましたら是非ご連絡を!
Email : nakayama1999@aol.com
デビューしたての頃の家庭画報での対談の連載より。 撮影の度に、女性編集者に家庭画報史上最年少の 連載カメラマンなんだから、くれぐれも出演者に 失礼のないようにと、釘をさされていたのが懐かしい。 Hasselblad 500CM 100mm トライX |