12.05.2012

五代目 中村勘九郎

ネット上で見た「勘三郎さん死去」の文字を見て、
思わず「えっ」と大きな声を出してしまった。
とっさに名前の勘違いであってほしいと思いながら、
調べてみたら、五代目勘九郎さんだった。
とても、悲しい気持ちになった。

1998年、大河ドラマ「元禄撩乱」の撮影がスタートした頃に、

月刊現代の「貌」シリーズの連載で撮影に伺った。
歌舞伎役者であるという先入観以外は特段もっていなかったが、
インタビューや撮影時に感じた人柄に一目惚れしてしまった。
歌舞伎役者の息子という宿命に真っ向から向き合っていながら、
誰に話をするにも、決して偉そうに振る舞うことなくフランクに接して、
集まった人達に気持ちよくそれぞれの仕事をさせてくれる
素晴らしい人生の先輩だった。
同時に、大工の頭領のような肉体労働者的べらんめぇなエネルギーと、
アーティストとしての繊細な感覚を合わせ持っているような、
世界のどこでもこのまま通用するジェントルマンだと感じた。

Hasselblad 903SWC f8 1秒 EPN

インタビューの中でも触れているが、仕事の話もそこそこに、
「楽しさ」や「遊び」をとても大事に生きていることが
ひしひしと伝わってきて、それがまた最高に素敵だった。

宿命の歌舞伎の世界に、新しい「遊び」を持ち込みながら、
精力的に仕事をして、恋をして、酒を飲む。

いつか、再び撮影をさせて頂く機会があったら、
勘九郎さんがどんな顔でお酒を飲むのか拝見したかった。
かっこいい「オトコ」がまた一人いなくなってしまった。

Hasselblad 500CM 100mm EPN

先輩に負けないように、楽しく生きなければと思う。


合掌