またもやFacebookの書き込みに「えっ!」と声を出してしまった。
大島渚監督が亡くなられた。テレビの生番組であろうと、言いたい事をはっきりと口にして、
時には手も出してしまう頑固者のかっこいい先輩が
また一人いなくなってしまった。
西暦2000年、「愛のコリーダ」がノーカット版で復活する際に、
雑誌Frauの取材で鎌倉のご自宅にお邪魔した。
道に面した黒い壁に圧倒されたのを憶えている。
縁側のある平屋の和風建築にお住まいなのは、正直さすがだなと思った。
写真のミッションは監督のポートレート3点と
御夫婦のエピソードがらみのブツ一点だった。
どうしてもワンカットはストロボで撮りたかった。
監督のご自宅のコンセントをエクスキューズしたくなかったので、
用意していた積層電池式のナショPを、
居間で待っている間に傘バンにセッティングした。
程なく、既に40年連れ添っておられる奥様の小山明子さんが
監督の手を持って、居間に入って来られた。
数年前に患った脳出血のリハビリ中で、不自由な足を引きずりながらだった。
(「御自分の足で立ってる写真を撮るのは、今しかない!」)
監督を怒らせたら撮影なんて一瞬でNGになるだろうと
気にしていたにもかかわらず、挨拶もろくにしていないまま
「監督、そのまま撮らせて下さい!」
と叫んでしまった。
露出も計らずに、出会い頭に向けたカメラに笑顔を作って下さった。
奥様の入れて下さったお茶を飲んで、やっと気持ちが落ち着いた。
Hasselblad 500CM 100mm Try-X |
監督は口には出さないが、顔の表情がうまくいかないようで、
どうにも居心地が悪そうだった。
2カットも御夫婦で手を繋いでいる写真はどうなのか?とも思ったが、
奥様に手を添えて頂くようにお願いした。
Hasselblad 500CM 80mm Try-X |
いい写真を撮る事ができた。
そのあと、縁側でのお一人のポートレートと、
居間に飾ってあった、エッフェル塔の前で
撮影されたお二人の写真が収まった小さなフレームを撮った。
今でも、手を繋いだ写真を撮ることにこだわっているのは、
この撮影がきっかけだったような気がしている。
監督、奥様、どうもありがとうございました。
自分が40代になった頃、きっと近い将来、
撮影した大先輩達が鬼籍に入るような時期が
来るんだろうなとうすうすとは感じていたが、
そろそろ、そういう時期に突入してしまったようである。
写真は、撮影した瞬間から、遺影になる魔力を持っている。
肝に銘じて、これからも肖像写真を撮っていこうと思う。
大島監督、お疲れさまでした。
思い切ったテーマや、大胆なキャスティングの映画達を
今後もゆっくり見させて頂きます。
合掌