2.23.2013

錦織圭

錦織圭さんがアメリカで行われている大会で準々決勝を勝ち、
4強入りを果たしたニュースを見て嬉しくなった。

昨年の11月、雑誌Numberの依頼で彼を撮影する時に、
「にしきおりけい」ではなく「にしこりけい」であることを初めて知った。

彼が所属するIMG Japanで用意された部屋はいわゆる普通の小さな会議室で
部屋の真ん中に大きなテーブルがどんと居座っていた。
一昔前までは、テーブルを自由に動かして撮影場所を確保していたが、
最近の会議テーブルにはインターネット等の配線が引かれていて
動かせる範囲が限られる事が多い。
この時もテーブルを配線が届くぎりぎりまで動かして、
狭いスペースに無理矢理3灯のストロボを立てた。
その部屋で、並行してインタビューすることは厳しいので、
話は別室で伺い、その後撮影は10分程でということになった。
もちろん、事前に撮影場所を確認して、少しエクスキューズしてでも
環境のいい状況で撮影をする作戦も考えられるが、
ポートレートの場合は、相手の懐に刀一本で飛び込むという意識もあって、
先方から与えられる条件等を楽しみながら挑むのも嫌いではない。

あまり大きな声では言えないが、実は彼の撮影の話を頂いた瞬間、
ネット用のポートフォリオの表紙にも使える手の写真を撮ろうと閃いた。
それに加えて、ラケットを武器に世界と戦う侍の写真を撮りたいと思った。
約10分間の半分以上を、手の撮影に費やした。

Number818号 97page iPhone5  オリジナルはHasselblad H3DII-39 80mm

侍の写真が、モニターで確認するまでもなく、自分の中でしっくりいかないなと
撮り進めているうちに、シャッターの合間に見せる若々しい笑顔を見て、
今は彼の笑顔を撮るべきだと作戦変更して数枚撮って撮影を終えた。
写真の神様が、彼の侍の写真は、
もう少し時間をおいて挑戦しろと言っている気がした。

テニスというスポーツは、少し不思議なものだと思う。
伝統のある上品なイメージがある反面、
プレー自体は、相手の嫌がるポイントを積極的に攻め、
どこかで騙し合いに見えるところもある。
ネットにかかって落ちたボールもインプレイである。
サッカーでさえ、負傷者が出たらボールを蹴りだすシーンもあることを考えると
スポーツマン精神とは何ぞや?とも思いたくなる。
そんな不思議な個人スポーツにおいて、日本人という体格的なデメリットを持った彼が
活躍しているのを見ると、応援せずにはいられない。
パワーや身体の大きさの違い、連日の長時間に及ぶ試合時間のせいで、
怪我に悩まされることも多いようだが、伊達公子さんの例もある。
ひとまわりもふたまわりも逞しくなって、
ずるがしこく世界と戦う迫力を会得した時にこそ、
ラケット侍の写真を撮らせて頂きたいと思っている。

まずは24日の準決勝。
がんばれ、圭!!