(前回の投稿からの続編)
御射鹿池からの山道を下って向かう第3目標は、霧ヶ峰に向かう途中にある普通の橋だ。長野県の原村から茅野あたりの八ヶ岳連峰の西側の斜面には谷を渡る車道橋がいくつもあるが、周りを変化のある樹々に囲まれて朝陽が半逆光からサイド光になる角度で落下防止の仰々しい柵が付いていないその橋を以前からマークしていた。車を走らせている間に太陽が覗きそうだったので、迷わず田んぼ道に車を入れて運転席から写真を撮っていたら朝日が顔を出した。
目的地に急ぐ。目当ての橋の近くには車を止める場所がないので、少し離れた路肩の広い場所に車を停めて簡単装着のアイゼン『すべらんぞー』を長靴に被せてから70-200ズーム付けっぱなしのD810を首に下げた。思った通り吹きっさらしの橋の歩道部分はかちかちに凍っていた。日の出前の氷の上をスパイク無しの靴で二足歩行するのはほぼ無理だと思ったほうがいい。刻々と光が変わる状況では連射が可能でトラブルが少ないNikonが心強い。
ショータイムだ。まるで白い花を満開にしたような樹々を削るように上手奥から光の粒が降り注ぐ。朝焼けで山々が赤くなるようにうっすらとピンクに染まり始める景色に向かってカメラを向けようとした瞬間、あたりの大気が大きく優しく動くような風が静かに流れた。それはマイナス20度以下のアラスカで10日間オーロラが現れる直前には必ず吹いていたような記憶を思い起こさせる風だった。刹那、樹々に乗っていた雪が舞いあがり、キラキラと輝く。まるで魔法の杖を空いっぱいに振りかざし魔法の粉が樹々に降り注ぐようだった。すると目の前の純白であるはずの雪景色がいろんな色に染まり始めた。太陽から出発して8分間宇宙をかけ抜けてきた光の粒子が地球にたどり着き八ヶ岳に弾かれて雲に遮られながらも地表近くで混ざり合って雪をカラーに変えていた。寒さのせいなのか花粉のせいなのか鼻水を垂らしながら、生『ファンタジー』を始めて見た気がした。
雪の中で朝陽を楽しむ余裕があったら皆様も是非!
やっぱ早起きするといいことあるな。。などと思いながら、正直こういう圧倒的な力を目の前にして自然の恐ろしさも感じた。
魔法というのはきっと自然のもたらす変化が起源になっているような気もするし、魔法使いという擬人化された存在も悪であることも少なくない。いまだに欲にまみれて争うことをやめられない人類、他の生き物を食べなければ生きていけない生態系、生き物のことなどまったくおかまいなく発生する自然災害、、などなどジレンマだらけのこの地球を育むきっかけがこの太陽から飛んできた光の粒子か〜〜。。いや、光の粒子は、最後の色はかなり偶然に決まっているようにも思えたし、きっと全ては壮大な偶然の積み重ねで成り立っているにちがいない。。。いや、まてよ。。と、エンドレスな妄想はいつも続いている。
最終目的地の霧ヶ峰ビーナスラインに入ったら思ったより雪が多く富士見台駐車場の一部以外は雪に覆われたままで車を停められないので、基本的に車に乗ったまま撮影を続けた。富士見台の食堂も閉まっていてサングラス越しでも目が疲れたのか充血したので昼過ぎに帰路についた。