小淵沢アジトでの暮らしも一年がすぎた。当初、泣きそうだった寒さも、経験と慣れでなんとかしのげるようになってきた。大晦日、いつもこの日はなぜか一年を通じて社会に対してぼんやり感じていたことがいろいろと頭をよぎる。
つい先月、小淵沢IC出口脇にあったスーパーマーケットのヤマトが倒産した。23時まで営業していたおかげで東京と山梨を行ったり来たりする一人暮らしの独身には心強い味方だったが、突然入り口に貼られた弁護士の冷たい文言が書かれたA4一枚の紙越しの薄暗い店内にそのまま野菜が山積みにされている光景はとても悲しいものだった。小淵沢には新しく改装されたJRの駅はあってもスーパーらしいお店は他になく、もはやインフラとも思えるレベルだった。誰が考えても地域住民や卸売業者への影響はとても大きなものだったはずなのに、あっさりと消滅してしまった。おかげで買い物は時間とガソリン代をかけて隣の街まで出かけなければいけなくなってしまった。現実はなかなか『陸王』のようにはいかないようだ。銀行や政治の力はほんとうに及ばなかったんだろうか。。
先日、将棋電王戦でAIが人間に勝利する番組を見た。なんとそのAIはすでにプロ棋士の戦いを数千年分繰り返しているらしい。知の経験が力となる分野においては、もはやジェダイですら敵うことはないのかもしれない。資本主義を支える株式取引にもすでに大手の証券会社はAIを導入していてすでに人工知能の性能比べになっている感は否めない。もはや個人のトレーダーが手動でマネーゲームをする時代も終わりだろう。
AIが進化することで、おそらく多くの局面でロボットを使って人間の労働とその喜びを奪うことになるだろう。いままで個人が享受してきた労働には対価があったわけで、それをマクロで吸い上げる関連企業がますます力を得ることになるだろう。資本主義とは基本的に格差を生み出す構造であるのは仕方のないことだが、個人の小さな営みにおける喜びまで奪うものであってはならないと思う。一部の企業に属する人間以外がすべて消費者になってしまう世の中に向かう超格差的資本主義ならば、今のうちに早く捨ててしまうべきだ。
とはいえ、目に見えない大きな力が働いているのは、きっといつの時代も同じだったのかもしれない。結局『愉しく生きる』しかないとの思いに至るのも大晦日だ。
『中山達也写真店』に並べた写真からの『富嶽三十六景2017』
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二十八歳で飛び込んだ写真の世界もすでに二十五年が経過した。
元気に走れるうちに少し減速して愉しく折り返す時だ。
みなさま、どうぞよいお年を!!