我が家の設計をお願いした上田さんが建物に付けた名称である。
7年前に、東京での高い賃貸家賃に嫌気がさして、
建ててしまった借金コンクリートの自宅兼事務所。
親父が大工であるにもかかわらず、
コンクリートな家に住んでみたくて、
たくさんの有名な設計士に連絡を取った。
住宅の設計料は誰に頼んでもそんなにびっくりするほど差があるわけでもなく、
超有名どころは着手までに時間がかかるという返事ばかりだったが、
実は、一番好きな感じだった上田さんに、運良くお願いすることが出来た。
科学特捜隊本部のようでもあり、
パッカリ開いて、マジンガーZが出てきてもおかしくない建物が出来上がった。
夏は超暖房、冬は超冷房。
はじめの年は、油断してエアコンを使いすぎて
電気代が月7万円もかかったこともあった。
都内のラボ(フィルム現像所)があがりの配送をしてくれるし、
使いやすいコンパクトな暗室が欲しくて都内に建てたのはいいが、
デジタル時代に勝手になってしまい、放射能もふわふわ舞い散る有様である。
生きてて、あまり後悔はしたことはないが、
なんとも言えない苦い買い物になってしまった。
オートクチュールな自分と家族の為だけの意匠の家に住むというのは、
結局はデザイナーのエゴをどこまで楽しめるかどうかだと思う。
白い床と天井は、掃除はめまいがするが普通に気持ちがいいし、
家で写真を撮るときにはとても重宝である。
傾いた壁やドアのない生活空間も、はじめはギクシャクしたが
慣れればすぐに愛着の沸く心地よい空間となった。
住むようになって数年してから、
イタリアの有名な雑誌インテルニから建物の取材をしたいと連絡があった。
「収納がほとんどないために家中にものがあふれていて、
私自身もフォトグラファーだけど、写真を撮るのは難しいと思う。
デザイナーの竣工写真を使ったほうがいいよ。」とアドバイスをしたにもかかわらず
編集とカメラマンは香港まで来たからということでやってきたが、
笑いながら家でお茶を飲んで、ほとんど仕事をしないで帰っていった。
iPhone4 階段脇に敷き詰めた1200枚のポラロイド |
ポラロイドでホックニーしたときの写真。
今では、隣に新たなビルが建ってしまった。
何千万もかけて建てた自分の家さえ、
好きな角度から眺めることも出来ないのが東京というところである。
モデルに志願して頂かないかぎり、
なかなか入ることが許されないいつも散らかっている現在の我が家である。