約一ヶ月前、八ヶ岳の家の近所を自転車で散歩していたら、
有刺鉄線で周りをかこっている田んぼを見つけた。
その鉄線を支える数十本の鉄パイプにずらりととんぼが止まっている光景を見て
思わず自転車を止めてとんぼとのセッションが始まった。
はじめは近づくとすぐに飛び去って逃げていたとんぼ達が
15分程経つとあまり逃げないようになった。
危害を加えないと判断されたのか、モデルになりたかったのかはわからない。
こんなにたくさんのとんぼが遊んでくれるならと
iPhoneのROADMOVIESというアプリで撮る事にした。
彼らはあっけなく私を受け入れて、わずか9分間の間に8匹も指に止まってくれた。
神が与えた奇跡のように思えて、すぐさま家に帰って
シグマDP3 MerrillとD800E+引き伸ばしレンズロダゴン逆付けをたすきがけにして、
ハッセルHにリングライトを装着したものを最近お気に入りのカメラバックに入れて、
再び現場に向かった。
2012年に東京の公園で虫達を撮影した時には、
昆虫界の頂点に立つような敏捷かつ警戒心の強いハンターぶりで、
もっともファインダーに捉えるのが難しいと思っていたとんぼ達が
いとも簡単にカメラの前で佇んでくれた。
翌日も似たような天候だったので、同時刻に再び撮影した。
約300枚のトンボ達の目にしっかりピントが合っている『あたり』を
撮ることが出来た。
大げさではなく、八ヶ岳のとんぼ達に仲間として受け入れられたような、そんな不思議な時間だった。