4.19.2020

白駒池

昨日、第二アジトにマスクが届いた。
耳が痛くなりそうでマスクの面積も小さく見るからに毛羽立ちそうな政府配給のものではなく、九州・小倉の同級生マダムがオリジナルでプロデュースしたものだった。ここだけの話だが、実はオレオレ、マスク評論家でもある。取材撮影が多かった時期は年間に100泊くらいホテルに泊まっていた。撮影が終わりホテル部屋に機材をぶちこんで撮影データのバックアップをしてすぐさま美味しい晩餐に出かけるわけで、部屋のエアコンの効き具合を試す時間などあるはずもなく、散々酔っ払った状態で部屋に戻り、朦朧としながらシャワーを浴びて歯を磨きベッドにぶっ倒れるわけだが、そんな酔っ払いに容赦なく乾いた風を送り続ける不慣れな初対面のエアコンから身を守らなければ、翌朝、二日酔いに加えて喉をやられて使い物にならなくなる。(長いカメラマン生活において仕事先で一度だけ熱が出たことがある。スペインで撮影が終わり最終の予備日を早くに切り上げて一人で空港に向かいパリのトランジットでカウンターの美人パリジェンヌにコムデギャルソンの縮絨ブルゾンの襟を立てて笑顔を振り絞って熱があり頭が痛いと英語で告げたら、なんと人生初エールフランスファーストにアップグレードされたのはいい思い出だ。当時のシンプルなファーストシートは普通にシングルベッドで白く柔らかい羽毛の枕と布団だった。真っ先にシャンパーニュを持ってきてくれたジュード・ロウのようなムッシュキャビンアテンダントが彼氏のようにケアをしてくれて、成田まで完全に爆睡したおけげでヨーロッパ便に乗った疲れどころか体調もよくなって『あれ?俺具合悪かったはずだけど、、』とリムジンですがすがしく帰宅したのを覚えている。)そんなこんなで、ロケ先でコンビニに立ち寄り様々なマスクをゲットして寝るようになって以来、自宅でも具合が悪いときや飲みすぎた時はマスクを付けて寝るようになっていた。さらに、移り住んだ小淵沢の3階角部屋という第一アジトの冬季朝方0度の環境で、喉の乾燥を防ぐのみならず、寝ているときに体内の熱をなるべく逃がさないようにマスクは必需品となり、口を開けて何十年もいびきをかいていた親父が数年前に声帯癌になってしまった(放射線治療で今は完治)ことも精神的なとどめとなって、どんな時も寝る時はマスク!となった。『No Mask, No Sleep』なTシャツを着たいくらいのベテランマスク評論家の目から見て、送られてきたマスクはとてもいいものだった。耳が痛くならないゴムと寝返りでずれないデザイン(ほどよい立体裁断によるフィット感とサイズ)は完璧だ。毛羽立たない生地も素晴らしい。色が薄紫ということでおっさんが外で付けるのは微妙なので枕元常備確定だ。
『ミッチ、さすがや!ありがとう!大事に使うちゃ!』
(残念ながら、このマスクは特殊な生地が入手困難になったということですでに完売とのこと)


脱線ついでに、もう一点。
このブログも10年ほど前から軽い気持ちで古いものから記憶を頼りに書き記してきたんだけど、少し読み返しながら思うのは書いておいてほんとうによかったと感じることだ。なんというか、出来事から10年くらい経ってしまうと言葉をさらさらと紡げるほど簡単に記憶が蘇らないと思うようになったからだ。つまり今の自分の記憶からでは抽出できないような10年以上前のこまかいエピソードや言葉や感情がこのブログの中に残っていてなんとも不思議な嬉しさを感じるのだ。公開するしないにかかわらずなにがしかの形で思い浮かぶ言葉をまるごと残しておかないと自分自身の記憶からも少しづつ消えていく。少し大げさだけど、歳をとると昔話をしたくてもちゃんと出来なくなることをこの場を借りて皆様にお伝えしたいと思った次第。。自分だけが持つ自分の記憶を言葉にしておくことは、間違いなく近い将来、タイムカプセルとなって自分へのささやかなプレゼントになる!コロナ報道に疲れてSNSバトンリレーにも飽きたら、ぜひトライ!

というわけで本題の白駒池!
標高2000mを超える湖としては日本一大きく、アクセスする国道299号線が冬季に封鎖される。最寄りの駐車場が500円かかろうとも、トイレがチップ制でも、紅葉のベストシーズンには駐車場で小一時間並ぶことになっても許せる神秘的な湖だ。駐車場から苔の森を歩いて約20分。以前ブログに書いた『もののけの森』を通りながら湖の周りを歩くこともできるし、湖を見下ろす高見石にもゆっくりでも1時間ほどで登ることができる。
『もののけの森』
なんといってもオススメは手漕ぎボートだ。ハイシーズンでもあまり混雑しないボートで、おにぎりをほうばりながら、好きな場所に移動して写真を撮ることができる。ボートの中で横になりこっそり一服しながら静かに空を見上げているところに甲高い音を立てて飛んでくる無粋なドローンを打ち落すには電磁波攻撃がいいのか高性能なモデルガンがいいのか?などとくだらない妄想するのも含めてとてもいいアローンな時間だ。湖畔でボートのレンタルできるのは2箇所、白苔荘と青苔荘。基本は30分だが湖全体をくまなく巡り、軽くランチをするなら倍の料金を払ってでも1時間借りたほうがいい。念のためにライフベストは装着、くれぐれもスマホ・車の鍵・財布をポチャンしないようにご注意を。

冷え込みがいまいちだった2019年だが、白駒池では10月のはじめには紅葉が始まっていた。例年に比べるとたしかに黄色・オレンジ系が弱かったが赤いものは見事に色づいていて依然残っている緑とのコントラストが印象的だった。