近頃、日本の政治家の顔が良くない。
誰一人として、仕事ができる政治家の顔に見えないのである。
男性のポートレートを撮ることも多いため、
プリントにしろデジタルにしろ作業しながら
一晩中一人の男の顔を見続けていると、
顔相占い師になったような気分になってしまう。
1997〜2001年まで駐日米国大使として赴任していた
Tフォーリー氏の政治家としての顔が強烈に記憶に残っている。
月刊現代の「貌」シリーズの連載担当編集の吉田さんと、
おそるおそるアメリカ大使館に足を踏み入れると、
ストロボケースとカメラバック、スタンドケースと
大型の荷物を3つ持っているにもかかわらず
セキュリティチェックらしいものもなく、すんなり中に招き入れられた。
流暢な日本語を話す係員に、チェックは無いんですね?と尋ねると、
はい、ただ何かあると大勢飛び出してきますから・・
と軽く言われてしまった。。
さすがアメリカ・・やるべきことはちゃんとやるようである・・
(官邸に入るときはX線検査はあるものの、よくそんな荷物持ってこれたな、
と笑いながら言った日本の官房長官の部屋は監視されているんだろうか )
一体何人がどこから覗いているかわからない居心地の悪い部屋で、
ベッチンの黒布を垂らし、ライトが倒れそうになったら
007が飛び出してきて支えてくれるかな?などと馬鹿なことを考えながら、
逆光気味にトップをいれる為にスタンドをどん(マックス)まで伸ばして
ストロボ1台2灯のセッティングをした。
部屋の真ん中には、天皇陛下とマッカーサーが会談の際に
写真を撮ったピアノがそのまま置かれていた・・
登場したTフォーリー氏は、ハリウッドスターよりも
ハリウッドスターのようだった。
とても70歳とは思えない若々しさで、フランクかつジェントルマン。
ボキャブラリーが貧弱で申し訳ないが、
あきらかに西部劇に出てきて悪党を全部やっつけてくれる人が
ビシッとパワースーツなのである。
戦わずして勝つオーラと、
嘘なんてつくはずない誠実さをひしひしと感じさせる。
もちろん政治がきれいごとだけではなくて、裏の顔だってあるだろうが、
とにかく、懐の大きそうなジョンウェインなその顔に、参ってしまった。
女も男も政治家も、、やはり顔が命である。
男の顔はヌードだと思ってる。
間違いなく男の顔には生き様が刻まれるのである。
カラーでピアノの前と、中庭、
モノクロのポートレート、3カットを頂いた。
後日、編集部の吉田さんのところに、
御本人から直々にお礼状が、届いたそうである。
さすがである。
日本の政治家も、誰と会うとか会わないとかじゃなくて、
きちんと「仕事」をして、生き様を顔に刻んで頂きたい。
Hasselblad 150mm F16 Try-X