7.05.2011

野中広務

1998年、月刊現代の「貌」グラビアの撮影で、野中官房長官の写真を撮りに行った。
小渕総理から土下座で官房長官を依頼され、就任したばかりだったと記憶している。

以前の古い議員会館の入り口で、
カメラとストロボとスタンドの簡単なセキュリティチェックを受けて、
ガラガラとバックを転がして、官房長官室にあっけなく入り込めた。

ほどなく野中さんは、登場した。
開口一番、
「よくそんな大荷物、持って入ってこれたな~」
実は、私自身も官房長官室にこんなに簡単に入れるとは意外だった。

野中さんは、テレビで拝見する気難しいイメージとは
まったくかけ離れたフランクな話し方をされる方だった。

野中さんの顔は思ったとおり私の大好物だった。
当時、政治家で一番撮りたかった方である。
とても日本人らしい、いい顔をされている。
写真を見ていただければご理解いただけると思うが、
黒澤監督の映画に登場してほしい「男の顔」である。

部屋の壁には、アクリルの点灯式の議員の名札のライトボックスがあって、
たしか、部屋の奥にどんとおかれた金庫の話もした記憶がある。
「それは、大事な金庫だよ」と言われたと思う。
当時は、政治なんかどうでもよくて、官房機密費などまったく知らなかったが、今なら金庫にがっつり頬杖でもついていただいて
ポートレートを頂きたいところである。

頂いた十数分の間に3カット4ページを撮らなければいけないので、
手を動かしながら頭半分で観察させて頂いた。
数多く政治家の方も撮影させていただいているが、
やるときはやる政治家の迫力のようなものを
一番感じることが出来た方だった。

重要文化財ともおもえるような古い壁にバック用の布を貼る気にもなれず、
だからといって背景用にスタンドを立てる場所も時間も無さそうだったので、
編集の吉田さんに別珍の黒布を野中さんの後ろで、
手で持ち上げて頂いたまま撮影させていただいた。

多くのポートレートで私は極力シンプルにカメラに正対するスタイルを好んでいる。
それは、いろいろ変化を付けて撮影をした写真達も、
時間を経て熟成されると、シンプルなもののほうが
どんどん美味しく見えてくる経験からであるが、
このときは、会った人にしかわからない野中さんのエネルギーを
写し止めたい思いから、すこし動きのある感じを狙った。

Hasselblad 500CM 100mm Try-X

近頃、なんとかビズとかで、ネクタイをしない政治家が増えている。
仕事に疲れた飲み屋の酔っ払いのおっちゃんにしか見えないということを
誰か、伝えてあげたほうがいいと思う。

環境大臣、防災大臣と兼任し、復興大臣に就任された方が、こんな感じらしい・・
松本復興相、宮城県の村井知事を叱責   
きちんと責任を持って仕事をして、やるときはやるパワーを見せてくれれば
政治家がすこしぐらい偉そうだって国民は、なんとも思わない。
いまの日本の政治家は、おそろしく重要なポジションにいると思う。
今、何をするか、何が出来るか、何を目指すか、
究極の日本の阿弥陀くじを進める立場にあると思う。
ほんとうの意味で日本の将来のための力を発揮して欲しいと強く願う。