勲章も授与されたイギリスのファッションデザイナーである。
確か2000年頃にサンエーとの契約で日本でブランドを展開していた時期だった。
テーラードなラインとユニークな色や素材を融合させたスーツは、とても面白かった。
雑誌BRUTUSの特集ページで彼のポートレートの撮影をさせていただいた。
スケジュール確認の電話で速攻「モノクロでやらせてもらってもいいですか?」と尋ねた。
テーラードを学んだ黒人デザイナーの手と顔のモノクロプリントがあれば、
必要十分であると、瞬間的に判断した。
おそらく今時であれば、デジタルで撮影したサムネイルを
「いちお、カラーのも入れといてください」
と言われるまま、なんとなくパソコン上でカラーもモノクロもシャッフルされて表示され、
セレクトされるところだろう。
もちろん確固とした意思(エゴ)表明として、
モノクロだけのセレクトしたデータを見せるのも大事だとは思うが、
「カラーも見せてください。。あ、あとアザも入れといてください」
と言われてしまうと、「やだ」とは言いながらも渡すことになってしまう。
この何でもかんでも軽い気持ちで見てしまうという作業が、
なんだか、最近、、少し嫌いである。
この時は、わざと顔と手の四つ切プリントを用意しただけだった。
手の外側の黒い肌と、上品になめされたような黒人の手の平のコントラストは、
間違いなくページのコンセプトとマッチすると思っていた。
(この頃、プリントで入稿するとありえないくらい埃ごと
スキャンされたまま紙面になることが時々あった。)
この時も、そんな埃だらけのプリントには見えたものの・・・
裏のページが透けて見えてはいたものの・・・
編集の企画と写真、デザインとが見事にはまった、今でもお気に入りの見開きとなった。
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