8.05.2011

竹中直人

1995年、雑誌VIEWSの「カリスマは語る」という連載グラビアで
竹中直人さんの写真を撮らせて頂いた。
8ページの構成なので、スタジオの外でも撮ることが多かったが、
竹中さんの時は、スタジオで全てやらせて欲しいと編集の小柳津さんにお願いした。
大河ドラマの豊臣秀吉役にキャスティングが決まったばかりの竹中さんの迫力に、
直球でシンプルに、時間を気にせずに向き合いたかった。

男性の顔を撮ることが好きになったきっかけの撮影だったかもしれない。
体の表面では汗を吹き出しながら、
全頁スタジオ撮影にしてもらった事もあって、
頭の中では、冷静に構成を考えることを学んだ撮影でもあった。

白バックで撮影しようとして、竹中さんが立ち位置に入りながら頭をなでているのを見て、
シルエットだけで十分ページになる!と判断して、
スタジオマンに「バック飛ばしだけでっ!」と叫んですぐさまシャッターを押した。

Mamiya RZ67 トライX プラス1 
プリント合成

寄り・引き・グレーバック・白バック・低速シャッターによるぶれ、を切り替えながら
約30分ほどで白ホリでの撮影を終えた。
この時に、時間の限られたカット数のあるバリエーション撮影というものは、
被写体に向き合わないで、机上の打ち合わせだけでは
構成するべきものではないのかもしれないということも感じた。

顔の寄りの時に、竹中さんがスッと顔の前で手を組んだ。
タレントさんの顔がこれだけ隠れていれば、普通はボツかもしれない。
これだけ顔を隠したラフは想定もしないだろう。

Mamiya RZ67 トライX プラス1
デジタル撮影が全盛になって、
撮影するカットごとにモニターに映し出される現場も少なくはないだろう。
想定したラフとモニターを見比べて写真の細かいことだけに目がいってしまって、
現場で奇跡の一瞬にしか現れない現実を見逃すことなく、
そういうポイントを大事に攻めることこそが、
より写真的な写真を撮るために大切なことだと思っている。

翌年の竹中直人さんの野趣あふれる素晴らしい豊臣秀吉の仕事を見て以来、
大河ドラマを毎年かかさず見るようになった。