世界中から集まる楽しいお祭り「世界陸上」が始まった。
たった今、室伏広治さんが予選突破の投擲をした。
彼とは2度、お会いしている。
一度は2001年の月刊現代のグラビア貌シリーズの撮影だった。
何かの大会にあわせて取材に伺ったが、
カメラの前に座っていただくことが出来ないということで、
望遠レンズで扉のページを撮影した。
じつは、この時が40ヶ月に及ぶこの連載の最終回だった。
40人目にして、初めて特写(カメラの前に来ていただいて撮影する)が出来なかった。
もちろん競技会なので神経質になってることは想像できるし、
余計な負担をかけてしまう可能性もあることは重々承知しているので、
400ミリレンズで遠くからシャッターを押しながら、悔しい思いをしたのを憶えている。
これは、まったくの私見だが、
この頃、彼は少しマスコミを遠ざけていたようなところあった。
カメラがあると、少し気難しそうに、避けていると感じられた。
なぜ、そう思ったのかというと、それ以前に一度彼にあったことがあったからかもしれない。
たしか、2001年からさかのぼること3,4年だったと思う。
ある陸上大会で、女性ランナーの取材をした地方の競技場の帰りだった。
当時はまだ、がらがらと転がすカメラバックはあまりメジャーではなくて
タムラックの大きなショルダーバックにヨンニッパ(400ミリ2.8)のレンズを抱えて、
駅と競技場を結ぶシャトルバスかなにかの停留所のベンチに座っていた時だった。
そこに、まだ体はそんなに太くはなかったが、
堀の深い見るからにハーフの顔立ちの、筋骨たくましい若者が歩いてきて隣に座った。
彼が室伏広治であることはすぐに理解した。
当時はまだ、ずば抜けた成績は残していなかったが、
父親との二人三脚で日本のハンマー投げの歴史を変えるかもしれない
男であることも知っていた。
いつもなら「かっこいいすね~」と軽くジャブで話しかけるところだが、
将来どこかでお世話になることもあるかもしれないので、軽く会釈だけして黙っていた。
サラブレッドとしての誇りもあるだろうし、苦悩もあるだろう。
あきらかにマスコミである大きなカメラバックをもった私に、
話しけかられるのも気持ちのいいものではないだろうと思ってのことだったかもしれない。
「カメラ、重そうですね~ほんと大変ですよね、、カメラマンの方も・・」
いきなり、半分外人の顔をしたターミネーターの100万倍ハンサムな男が話しかけてきた。
しかもかなりフランクに、こっちのお株を奪うようなお気軽さで、である。
「ハンマーよりはましですよ・・・」
なぜか、拍子抜けするように気軽に言葉を交わしたのを憶えている。
彼はいい男である。
たったこれだけの数分の会話だったが、
彼が取材嫌いだろうが、撮影を嫌がろうがそんなことは関係ない。
今、テレビで見る彼の顔は、とてもいい。
最高に撮りたい感じである。
てぐすねひいて待ち構えている業界のキャスティングに翻弄されないで
武骨に優しいおとこの顔であり続けてほしいと思う。
韓国で血管がぶちきれるくらいおもいっきりハンマーを投げられるように
影ながら応援している。
Canon EOS1N 400mm トライX |