1.23.2011

白鳥

大学時代、代々木上原で同い年の小野君と
2Kの部屋をシェアーして暮らし始めた。
バイト先で知り合ってから、
約10年の間、一緒にいたことになる。

なぜか二人とも写真が趣味で、
それぞれ、6帖の部屋を暗室にしてプリントしたり、
時間が合うと、飲みながら写真の話で盛り上がっていた。

彼の実家の近くの川には、
冬になると多くの白鳥が飛来するということで、
写真を撮る為だけに、カメラだけを持って、福島に向かった。
おそらく写真の為の人生初ロケであったように思う。

現場は大雪が降っていた。
時折、ヘリコプターがとびたつような
ものすごい音を立てて白鳥が水面を走り、飛び立っていく。
NIKON F2のモータードライブを思う存分実戦で使う事ができるのは、
ほんとに楽しかった。
フィルムはモノクロとはいえ、
デジタルのようにシャッターを押しっぱなしにするような
撮り方はしていなかった。。
というよりもそんな撮り方は知らなかったというべきかもしれない。

東京に戻り、流しでフィルム現像をして、
風呂場にフィルムをぶらさげた状態でルーペで覗いて
当たりをつけていたのも、懐かしい。

生まれて初めての雪の中で興奮しながらの白鳥撮影行は、
一枚一枚ピントを合わせるのが、いかに難しいかを教えてくれた。

今となっては、オートフォーカスで、
誰でも撮れるような写真になってしまった。
あまり人には見せた事がない写真だが、
生きた証として、貼ってしまう。
これでも、当時は奇跡のピントの4枚だったりしたのである。

あれから約25年が経ってしまった。
牙をむいた野生の白鳥のどアップを
次回は狙いたいとは思っているが、
未だに実現していない。







NIKON F2モータードライブ ネオパン