進学校であまり校則が厳しいわけではなかったが、
夏休み明けに職員室に免許を取った数名の生徒が呼び出された。
法律にのっとって免許を取って何が悪いんですか?
と胸を張って答えた。
免許を取った門司自動車学校は、バイクの死亡率日本一だったが、
バイクくらい乗らないと青春は来ないのである。
当時の小倉はおかげさまで気合いの入った暴走族がけっこういて、
何度か御一緒したことがあるが、
マルチの集合管をエンジンの下でぶったぎった知り合いと走った時は、
さすがに言葉を失った。
一緒に走っていても、自分のバイクの音がまったく聞こえないのである。
ディスコのスピーカーを4つくらい背負ってると思えるような、
すさまじい爆音だった。
学習院大学に入ってから、すぐにローンで中古のCBX400Fを買った。
親の金で買った赤いフェアレディあたりで登校する連中の間を擦り抜けて
学校の裏にバイクを止めて、GOTOのロングブーツを履いたまま、
同じようなブーツを履いて練習している乗馬クラブのグランドの横を歩いて、
部室に行ってタバコを吸い、
夜にはバイト先の原宿のデイリープラネットに通っていた。
大学3、4年のころに付き合っていた女の子を迎えに、
女子校の正門をぶっちぎり、校舎の窓から顔をだす
大勢の女子高校生の黄色い声を聞きながらタバコを吸っていたのは
若干アホではあるが、そうとうかっこよかったなと、
いまだに思っている。。
「盗んだバイクで走り出す」とはそういうことだ。(意味不明その1)
その後、新車のTZR250に乗り換えて、Manbow'sのバイト時代に、
ほんとにちょくちょく仕事が終わって
朝の3時くらいから5、6人で富士山まで高速を走った。
トンネルで2速落として、レッドゾーンぎりぎりで駆け抜ける
忠男のチャンバーのサウンドに酔いしれ、
帰りにはバックミラーに映る朝焼けの富士山に
「あばよっ」とか言っていた。(意味不明その2)
大学を卒業して、しばらくして大きな事故にあった。
新橋の交差点右折のハイヤーに側面から突っ込まれて、
右足首を骨折して、交差点をまるまる飛んで向かいのガードレールに
頭から突っ込んで鼓膜を破ってしまった。
もしGOTOの丈夫なロングブーツとフルフェイスのメットが無かったら、
随分、違う人生になっていたかもしれない。
意識が戻って救急車で警察病院に運ばれたが、
足に石膏のギプスをはめられて、車いすの膝の上にメットをのせられて、
「はい、じゃ〜明日また来て下さい 」
てっきり入院だと思っていたが、警察病院は骨折くらいでは
入院にならないとのことだった。
時は経ち、カメラマンとして独立して
ふとバイクの事を思い出してしまった。
すかさず大型免許を取って、Vmax1200を買った。
たしかに面白いバイクだった。
ちょろちょろと走る大型スクーターなどは信号が変わって2秒で
バックミラーで小さくなっていた。
ただ、最も重視する高速巡航において、
あまりに殿様ポジションなため、風と戦うのにすごく疲れた。
風を切って走る年はもう過ぎたのかもしれないと思い立ち(意味不明その3)
いろいろ調べて、一昔前のツールドフランスで並走していた
ポリスバイクのK100RSの中古に目をつけた。
BMWのALPINAあたりが売ってた頃の200万円超えのバイクである。
普通にブレンボのブレーキにビルシュタインのショックである。
走りながらタバコも吸えそうなフルカウルに、
グリップヒーターなども付いている。
購入してから乗って帰る時は、さすがに国産バイクとのルックスの違いから、
かなり恥ずかしかったが、乗り心地には正直やられてしまった。
高校の時からこれに乗ってれば良かったと、本気で思った。
重さや大きさは国産とそんなに変わらないのに、
言葉にはしにくい乗りやすさがしみじみと感じられた。
白いシンプソンのメットにしたり、カーナビを無理矢理付けたりして、
いささかオッサン仕様だったが、新潟あたりまでさくっと走りたくなる。
佐渡島にも渡ったし、金沢〜新潟はあっという間である。
「神戸でちょっとお茶してくる 」なんてのも気合いで可能だと思う。
なんせ一番快適に静かに流せる速度が160くらいだったりするのである。
おまけに車体とメットが白いおかげなのか、
飛ばしていると追い越し車線が十戒の海のごとくぱっかり開くのである。
あまり大きな声では言えないが、タイトなレザージャケットを着て
びっくりするような速度で走り抜ける
50センチの髪がなびいているライダーを見て、
「今の男?女?」と言わせるのが
暇つぶしだったりするわけで。。。(意味不明その4)
時々、夜中に保土ヶ谷まで第3京浜を流して遊んでいたが、
ぎっくり腰をやってから、少しずつ家の飾りになってしまった。
3年ほど付き合ってから、あまり乗らずに朽ちていくのも可哀想なので
手放してしまった。
意味不明なバイク人生で惜しむべきことは、
自分のバイクの普通の写真がほとんど無いことである。
脳内HDでこうやってかっこよく再現するしか無いのである。
きっとまた、何かをきっかけにバイクに股がりたくなるのは間違いないが、
電気バイクにしろ、モンスターバイクにしろ、
いくつになっても牙は研いでいたいと思っている。(意味不明その5)
Fuji Fine Pix 50i |