昼間の早いうちに納品をすませて、
ぼーっとしてたら、気がつくと自宅だった。。
まだ陽がある時間だったが、
寂しくなった一匹との散歩を終わらせて、
ハニーの遺骨の前で一人でワインを抜いた。
夕方のニュース番組で、
ブランド品の中古を扱うお店が
銀座の真ん中に出店したということで、
エルメスのバックが映し出されていた。
2003年、BRUTUSの戦友の池田さんと一緒に
オーチャードホールの楽屋に特攻した。
作戦タイムはインタビューと撮影も含めて20分程だった。
時間のロスをさける為に、廊下でストロボを足に立てて、
池田さんとむき出しの機材を手分けで持って部屋に突撃した。
女優でもあり歌姫でもあるジェーンバーキンさんが、
具合が悪そうに椅子に座っていた。
「アラベスク」のコンサートを直前に控えてるにもかかわらず、
39度の熱が出てしまって、テンション0の状態だった。
意外な程、狭く質素な楽屋の様子を観察すると、
床には、荷物がはみ出て口が全開になった
くたくたのエルメスのバーキンが
無造作に放り投げられていた。
契約書など無い日本の雑誌の取材であれば、
このクラスのタレントさんがひとこと「ごめんなさい」
したらそれで終わりである。
一瞬、「ばらし」かなと思ったが、
ジェーンさんは取材に応じてくれた。
とっとと写真撮りましょうということになったのはいいが、
「もう、椅子に座ってるのもしんどいのよ。。」
実はこういう状況は不幸中の幸いだったりする。
下手をすると営業スマイルを撮らされてしまい、
あまり攻めることもできないまま終わったりする可能性もある
雑誌の取材という状況において、
物理的にほかのカメラマンに見せない状況でいてくれるのは、
実はちょっと嬉しかったりするカメラマンの嫌なところである。
「メッシーボック〜
どうぞ、ここの床に座って壁にもたれて楽にして下さいシルブプレ」
限られた時間と空間では、
実はこのほうが格段にいい写真が狙えたりするのである。
しかもかわいいスニーカーもしっかり写真に納めることができる。
2灯用意していたストロボの1灯のみを適当に壁にバウンスさせて
ラフに露出をとって、気が変わる前に、すぐに撮り始めた。
すぐ傍に転がっているバックを脇に置くべきか?
「私のバーキンにサインもらってきてよ」
という妻の冗談に付き合わなくて良かったなどど
つまらないことを考えながらフィルム二本を撮った。
自前のラフなスニーカーを少し恥ずかしがりながら、
お世辞にも綺麗とは言えないカーペットに座った撮影を
楽しんでくれたようだった。
美しくて、きちんと自分の世界を持っていて、
しかもちゃんと大人で、、、フランス人女性はほんとに可愛い。
とあるフランス人映画監督と言葉を交わした際に、
「世界で一番可愛いのは、フランス人の女の子だ。
でも、世界で一番スケアリーなのもフランス人の女の子だ」
と話していた。
ま、どこの国の女性も
敵にしてはいけない生き物だと思う。
このご時世で、中古ブランド品業界は絶好調らしい。
高級ブランドの出稿が減ったことも
出版不況の原因の一つだったりもして、、
日本の若い女性達が100万円もするようなバックを
こぞって持ち歩いていたからこそ、お金が回っていたわけで、、
なんとも、、、なんとも不思議な世の中である。。。
Hasselblad 80mm Kodak160ネガ ポートラペーパー