ジルサンダーさんの大きな特集でルポのお仕事を頂いた。
ドイツのファッション界の巨人である。
フォーシーズンのラウンジで集合となったわけだが、
私がショルダーのカメラバックを持っているのを見て、
彼女の目つきが変わった。
「私は、写真を撮られる為に来たんじゃない。」
そしてBRUTUSの提案する東京日記の内容について。
きちんとミーティングをしたいということで、急遽全体会議となった。
そして顔を狙うのではなく、あくまでルポに徹するということで、
EosとRicohのGR1とWIDELUXを武器に、
たしか4日間程、御一緒させて頂いた。
聡明という言葉は彼女の為にあると思える程、
思慮深くて美しく、芯のある女性だった。
お茶を飲む時やツナのにぎりを口にする時は、
とてもフランクに笑ってリラックスするのだが、
何か気になるものを見つけると「フォーカスフォーカス」と
若いスタッフに聞こえるように何度も口にして、
集中することの大切さを教えてくれているようだった。
当時はまだデジカメなどは無くて、
彼女が、私がスナップしていたGR1に手を伸ばしてきたので、
フラッシュの強制オンオフのスイッチを教えてから手渡すと、
それからロケが終わるまでの数日間、彼女のものになってしまった。
ストロボの強制オンオフのスイッチが独立していて分かりやすく、
単焦点でコンパクトな点をとても気に入ったようだった。
きれいな黒のサイドゴアブーツをはいて、
早足で歩く姿はとてもかっこ良かったし、
雪の庭園でぶかぶかな黒ゴムの長靴をはいて、
先頭をきって散策する姿も素敵だった。
きちんと自分のやりたいことをする姿勢と、
それを主張することを間近で見せて頂いた。
後日の打ち上げの際には、
戸高さんと相談して決めた彼女へのプレゼントのGR1を
家電量販店で手に入れて伺った。
少し前にBRUTUSで撮影していた多重露出のファッションページと
今回のルポの写真を褒めていただき、
「フォーカス」という言葉とともにハグをしてくれた。
顔は撮るなと言われても、
カメラマンとしては顔がわかる見開きの扉はとーぜん狙うわけで、、
編集スタッフと自分の体も写り込んでるにもかかわらず、
めでたく紙面を飾ることが出来た、
私の中では究極の「一枚」である。
いよいよユニクロに、彼女の名前を冠した品物が出始めたようで、、
「フォーカス」して、何かを買わせていただくつもりである……
CANON Eos1N 17~35mm RHP |