1.11.2011

JIL SANDER

2001年、BRUTUSの編集の戸高さんから
ジルサンダーさんの大きな特集でルポのお仕事を頂いた。
ドイツのファッション界の巨人である。
フォーシーズンのラウンジで集合となったわけだが、
私がショルダーのカメラバックを持っているのを見て、
彼女の目つきが変わった。
「私は、写真を撮られる為に来たんじゃない。」
そしてBRUTUSの提案する東京日記の内容について。
きちんとミーティングをしたいということで、急遽全体会議となった。

そして顔を狙うのではなく、あくまでルポに徹するということで、
EosとRicohのGR1とWIDELUXを武器に、
たしか4日間程、御一緒させて頂いた。

聡明という言葉は彼女の為にあると思える程、
思慮深くて美しく、芯のある女性だった。
お茶を飲む時やツナのにぎりを口にする時は、
とてもフランクに笑ってリラックスするのだが、
何か気になるものを見つけると「フォーカスフォーカス」と
若いスタッフに聞こえるように何度も口にして、
集中することの大切さを教えてくれているようだった。

当時はまだデジカメなどは無くて、
彼女が、私がスナップしていたGR1に手を伸ばしてきたので、
フラッシュの強制オンオフのスイッチを教えてから手渡すと、
それからロケが終わるまでの数日間、彼女のものになってしまった。
ストロボの強制オンオフのスイッチが独立していて分かりやすく、
単焦点でコンパクトな点をとても気に入ったようだった。

きれいな黒のサイドゴアブーツをはいて、
早足で歩く姿はとてもかっこ良かったし、
雪の庭園でぶかぶかな黒ゴムの長靴をはいて、
先頭をきって散策する姿も素敵だった。


きちんと自分のやりたいことをする姿勢と、
それを主張することを間近で見せて頂いた。

後日の打ち上げの際には、
戸高さんと相談して決めた彼女へのプレゼントのGR1を
家電量販店で手に入れて伺った。
少し前にBRUTUSで撮影していた多重露出のファッションページと
今回のルポの写真を褒めていただき、
「フォーカス」という言葉とともにハグをしてくれた。

顔は撮るなと言われても、
カメラマンとしては顔がわかる見開きの扉はとーぜん狙うわけで、、
編集スタッフと自分の体も写り込んでるにもかかわらず、
めでたく紙面を飾ることが出来た、
私の中では究極の「一枚」である。

いよいよユニクロに、彼女の名前を冠した品物が出始めたようで、、
「フォーカス」して、何かを買わせていただくつもりである……

CANON Eos1N 17~35mm RHP