2.25.2011

Coleman(2006)

2006年度、Colemanのバックカタログで
モデルがらみのイメージ写真を撮らせて頂いた。
フィルム時代のカット数の多い仕事を思いおこすと、
最近のデジタルによるカメラとPCの連結撮影について
道具が変わっただけではなくて、すこし気になることがある。

コンピューターの移動や、電源の確保については
その時々の状況に応じて最適な方法を選択するしかないが、
逐一、撮影する写真を一枚一枚見てしまうことが、
ほんとうに「写真」にとっていいことなのかどうか?
考えてしまう。。

フィルム撮影の時は、
ポラロイドという手のひらに収まるような小さな写真を
スタッフそれぞれがじっくり確認して、
本番撮影に臨むというのが通常のやり方だった。
商業カメラマンとして、
考えられる準備をした上で
現場で出来る限りラフになぞってポラを撮るわけだが、
実は私の中ではあくまでそれはスタートであり、
そこから現場ならではの写真的なものをファインダーを覗きながら、
ラフ通りの合格点ではなく「K点越え」な写真をいつも狙っていた。

それはなぜかとういうと、
そもそもいい写真というのは、頭で考えてラフの上に
再現できるものではないと思っているので、
本番の状況の中でどうやったらよりいいものになるか
常にファインダーの中で、悶えていた。
デジタル時代になる前のADの方々の多くは、
カメラマンが見せたポラに、
必殺の一言デレクションを与えたうえで、
シャッターを押す私の横で被写体を見ながら、
ラフに相応しいものが撮れたと判断すると、
「もう、撮れたね、好きなの撮って。。」
「どんどん、攻めて。。」
などと言って、ある意味、、、カメラマンに仕事をさせてくれた。
実際、そうやって確信犯で撮らせた写真を使うADの方もいたし、
クライアントの要望で攻めの写真が採用になることもあった。

デジタルによる連結撮影で、一枚一枚みてしまうと、
どうしても目の前に出てくる絵の細かいとこに目がいってしまい
もっと引きでのどういうものが相応しい写真なのかという目線が
減ってしまうように思える。。。
「K点越え」を飛ぶ為の助走のシャッターも見られてしまうのも
気持ち悪いし、デレクションの邪魔にもなるかもしれない。
アナログ時代のような必殺な大局デレクションを口にする間もなく、
どんどん次の絵を見て、気になる細かいことに囚われてしまっていないか?
写真的には「あり」なのに、となりにしっかりラフが置いてあるせいで、
きちんと見比べたりして「それはいらないかな〜」
とすぐに言われそうで攻めきれなかったり。。
つまり、いちいちこまかく確認しているうちに、
ラフという予選通過のための合格点のような
ガチガチな写真になってしまう気がするのである。

最近、いろんな媒体を見て、
デジタル撮影によるこの予選通過な合格点写真を感じる事がよくある。
写真が弱っているとさえ思えることもある。

先日、日本人の女子中学生高梨沙羅さんがラージヒルで
141mを飛んで世界大会で優勝した。
彼女はジャンプが怖くないと言っていた。
デジタルという新たな武器を持った
おじさんカメラマンも負ける訳にはいかない。
がんがん 「K点越え」を飛ぶつもりだし、
そのための方法を探っていこうと思っている。

スタッフが力を合わせて攻めたアナログ仕事の記録
日帰り千葉で、この倍のカット数
日が暮れてしまい最後の右下の車のカットは、
なんとシャッタースピード1秒・・
楽しい 「K点越え」だった。

Hasselblad  ネガ スープラペーパー