1.18.2011

愛しのハニー

2011年1月14日夕方6時、愛しのハニーが旅立った。
〜1997年クリスマス生まれ、ビションフリーゼ♀〜

事務所と自宅を兼用にしている私にとって、
この13年間で最も時間を共有した愛人である。


我が家の階段の横のコンクリートの壁には、
約1300枚のポラロイド600の写真を貼っている。
「ハニポラ」と名付けたその写真達は、
我が家の犬を中心に、遊びに来てくれた友人や、
気になったブツなどをスナップしたものである。

ポラロイド社が倒産して、デジカメを使うようになり、
最近は「ハニポラ」を追加する機会がめっきり減っていたが、
ハニーの葬儀の朝、新しく発売されたフィルムのことを思い出し、
ネットで調べて、渋谷ロフトに自転車で向かった。
あまり評判を聞かないので、どういったフィルムに仕上がっているか、
少し心配していたが、ほかに選択肢はなく、
カラー100を5本、モノクロ600を1本購入した。
自宅に戻ってテストをしたら、やはり100は露出補正をフルにかけて、
近接でストロボを使っても、ほとんど絵が出てこないようだったので、
そのまま店に戻り、事情を説明して
残りを全てモノクロの600に交換して頂いた。
ただ、このフィルムは非常に扱いが難しい。
微妙な温度によって、あがり(コントラスト、トーン)が
全く異なってしまうことと、
シャッター直後、排出されるフィルムは光にかなり感光してしまう。
直射日光は、一瞬でも受けるとかなり真っ白になってしまう。

胸ポケットにフラップの付いたM-65ジャケットを着て、
ハニーを抱きしめて、葬儀場に向かった。

陽が落ちて焼き場を出ると、欠けた月が透き通った紺碧の空に輝いていた。
いつも散歩で一緒に眺めていた月を、
手のひらの大きさになってしまったハニーを空にかざして、見せてあげた。

自宅に戻り線香をあげて、ポラロイドを壁に貼った。
その瞬間に、数百枚あったハニーの写真達の全てが
音を立てて遺影に変わっていった。
生前の写真の持つベクトルが、
被写体の死によって恐ろしい程に変化するのである。
「ポートレート」は、撮影された瞬間から
「遺影」になる宿命を背負っている。
写真の持つ最も不思議な力の一つである。
「ハニポラ」はある意味、完結した。。。


ハニーがどこに向かったのかは、知る由もないが、
美味しいものを好きなだけ食べて、
元気に走り回っている事を願うばかりである。


しばらくは、外で一杯やるのは、サングラスが必要になりそうである。

POLAROID SLR 680  PX600 Silver Shade