9.16.2017

富士見高原『創造の森』登山道

冬はスキー場、夏は一面お花畑となる富士見高原リゾートの山の上には、世界各地の作家による石の彫刻が点在する『創造の森』がある。そこには高山植物のガーデンと3箇所の展望台があり、富士山・南アルプス・北アルプスの眺望を楽しむことができる。通常は商業施設ということもあり、スキー場のリフトか自動運転のカートを使って有料でアクセスすることになるが、営業時間外にこそ美味しい写真が撮れるわけで、リフトとカートを使わずにたどり着くためにいろいろと検索したところ登山道があるということはわかったもののその内容についてあまり詳しく書いているページが見つからなかったので、紅葉と冬を目前にして自分の足で確認してきた。せっかくの土曜日だが冷たい雨が降ってきたので、ここに記しておくことにする。

富士見高原リゾートの麓の『鹿の湯』の駐車場に車を止めて、SIGMAのMerrill2台をたすきにかけていつものように小型のバッテリーを10個ポケットにねじ込み寒さ対策で長袖のフリースを腰に巻いて手ぶらで奥に続く道へと歩いた。『創造の森』にはトイレと自動販売機はあるのでガムを口に放り込み舗装された道を10分ほど歩くと左側に登山道入り口と思われる砂利道が現れた。

iPhone

そのリゾートっぽい優しい表記とは裏腹にそこから見上げたのは、とんでもない傾斜のつるつるに滑りそうな山道だった。看板表記は30分になっているが急な斜面を手ぶらにもかかわらず息をきらしながら用心深く登り10数分でなんとか到着した。鹿やイノシシを防ぐための鎖をかけられた門扉の開閉をして、展望台の一つ『望岳の丘』にたどり着く。
問題は下りだった。用心しながら腰を低くして歩を進めていたにもかかわらず、下ろした足が一瞬つるんとすべり、上半身がのけぞりながらかろうじて曲がったまま残った片足の感触を頼りにカメラを持った両手をばたばたさせながら思考がいきなりスローモーションになった。『やば!こんなとこでマトリックスごっこでキアヌ・リーブスみたいなポーズとって、後ろの石に頭ぶつけて人知れず逝っちゃうのかよ〜きっつ〜背骨がふんばりきれずに折れるかも!』なんとかこうして生還してブログを書いているが、しばらくはその場で、背骨や神経がおかしくなっていないか体をあちこちひねったり触ったり、登山靴のビブラムソールの溝の具合を確かめたりと、かなりひやっとした経験だった。同時に、神経や脳の働きが致命的な瞬間に処理能力が超高速になるために相対的に時間がスローになるような感覚も味わった。

写真ではわかりにくいが、ほぼ真下に向けて撮っている感覚
乾いているように見える場所も実は表面だけで
すぐ下は練りたての粘土状態    iPhone

アイゼンをつけてピッケル装備の冬山である程度の傾斜になると後ろ向きに三点支持で下っていくことの意味がよくわかった。
ロングのリフト2本分を一気に登るこの道のことが、まるであまりおすすめしないような空気感でネット上に出ていなかったわけが少し理解できた気がした。槍ヶ岳の岩場をクリアするよりもある意味恐ろしいと思える経験をしたのは幸いだったかもしれない。さっそくアイゼンをいろいろと探すことになりそうだ。もし、同じ道を通ることになったら、なるべく草の生えている両脇を歩いて慎重すぎるくらいに両足の荷重を確認しながら、くれぐれもご安全に!!もし普通のスニーカーやソールに溝のない靴の場合は問答無用でリゾート正面からリフトかカートでのアクセスをおすすめする。

というわけで『創造の森』
アクセスはアレだが、富士を見る高原の名に恥じないとても気持ちのいい場所だ。

クリックでフルスクリーン推奨
今年はとにかくとんぼが多くて、なぜかあまり逃げないやつが多い。とんぼが集まっている場所に3分ほどじっとしていればそんなに頑張らなくてもすぐに指にとまってくれる。『いつも車でぶつかってごめん、一族にお伝えください』と念じている。

9.04.2017

2017晩夏 雑感

★ようやく秋らしい夕暮れになってきた。
春から夏にかけて、霞のせいで抜けが悪かった空気も少しずつクリアーになって山々がはっきりと見えるようになってくる。そして毎回違う美しい夕焼けをたくさん拝むことができる。田舎に住んでいると、四季折々で清少納言の残した言葉が悔しいほどに身にしみる。一方で、春先に爆発的な緑に包まれていた山や森を魔法のように紅葉で赤く染める自然の圧倒的な『どんでん』のエネルギーに怖さすら感じてしまう。

写真はクリックでフルスクリーン推奨
南アルプス 2017/08/26 18:32 SIGMA DP3 Merrill

★昼間、木漏れ日に包まれ、清流の音に包まれていた気持いい河原が、日が沈んだ途端、気配が豹変する。暗くなって視界を遮られ、川の流れの轟音によって聴覚を奪われ外界の情報が激減する。心地よかった川のせせらぎは、闇夜の魔界の岩門が開く轟音にとってかわり、きらきらと輝いていた岩の隙間から目をぎらぎらさせたもののけがこちらの様子を伺っているように見えてくる。ほんとうは満天の星空や月明かりで照らされたランドスケープも撮影したい気持ちはやまやまなんだが、どうも日没後の単独行はいまだに苦手だ。

日没後の清里大滝の渓谷 
ND8+CPL 30s f11 SIGMA DP2 Merrill

★八ヶ岳連峰の山道を歩いていると『フジバカマ』という控えめな、、というより割と地味な花がまとまって咲いていることがあるが、そこには『アサギマダラ』という蝶がひらひらと舞っていることが多い。望遠レンズにスイッチしてカメラのファインダーで覗くと半透明の羽の色がなんとも言えない薄い青緑色で、『ナウシカ』が空を飛ぶ時に着ている服の色を連想させるのでこの蝶のことを勝手にナウシカと名付けたが、少し調べると、人の気配がしてもあまり逃げないこの蝶は、その優雅な飛び方とのんきな感じとは裏腹にとんでもなく長距離をさすらう蝶らしい。鳥のように激しい羽音を出すオオムラサキがたくましく飛ぶために花の蜜ではエネルギーが足りないのでカブトムシを蹴散らしながら樹液を吸うようになったというのに道中の休憩ポイント?の八ヶ岳でこんなにかわいい花の蜜をちょろちょろ吸ってるだけで、音もしないようにスケスケの羽をふわふわさせながら沖縄から佐渡島まで飛んでしまうなどとはとても思えない不思議なやつだった。そして、一体どうやって、北生まれか南生まれかによって旅をする方角をきちんと把握し、約4、5ヶ月の一生をかけて一度の旅をするローンレンジャーな種族がうまいこと途絶えることなく存続しているのか、想像もつかない。

『虫を見た目で判断するな』 アサギマダラ@横谷峡遊歩道
Nikon D810 70~200

★2台所有しているクリップオンのリングストロボがゾンビの撮影で酷使しすぎたせいか寿命を迎えそうでこのところ不調なので代替機を探していたらその後継機種SUNPAK auto16R proが最弱パワーで閃光時間が6万分の1秒というスペックを見て速攻でゲットした。(現在はすでに生産中止)大型のストロボでも6万分の1秒と謳っている機種は見たことがない印象でさっそく川に持っていった。出力を最弱の1/256にして仕方なくカメラをびちょびちょに濡らしながら撮影したものを部屋に戻りモニターで確認したら、予想どおりピタリと激しい川の流れも水しぶきも止まっていた。どのカットもアクリルのオブジェのようだった。

SUNPAK auto16R pro 出力1/256 @尾白川
1/2000s f8 SIGMA DP3 Merrill

こんなおもしろい武器があるなら、当然、キッチンの流しもすぐにスタジオとなる。流しの底に黒いお盆をおいて水道の蛇口をひねる。あとは『止まれ』と念じながらシャッターを押すだけだ。さすがに流し4面銀レフが効きすぎてなんだかよくわからないが、ま、のんびり作戦を練るとしよう。
今年の秋はいろいろと楽しくなりそうだw

SUNPAK auto16R pro 出力1/256 
1/2000s f11 SIGMA DP3 Merrill