12.15.2017

北千里浜@九州・九重

山梨に住んで時間があれば山を走り回っているにもかかわらず、忘れた頃に夢の中に出てくる不思議な山の景色があった。草木も無い岩だらけの山々とその谷間の大きな岩が転がる道だ。どこの国なのかもわからないような不思議な記憶だ。ふとしたきっかけでどうやら子供の頃に兄がバイトをしていた故郷・九州の九重法華院温泉山荘に行った時の記憶であることがわかった。ネットで探しあてた目的地『北千里浜』を目指す相棒は、もちろん悪友の幼馴染同級生画家・田口順二だ。車での長者原ビジターセンターまでの往路に、小倉駅の裏で止まっているところを観光バスに接触されておっさん二人で言葉を失うというハプニングのおかげで日没と同時に山小屋に到着した。窓越しに輝く明るい月の光で温泉につかり、襖一枚越しに耳に飛び込んでくる山マダム達の深夜3時頃まで続いたおしゃべりに怒鳴る気持ちを抑えながらの山小屋泊となった。早朝は雲に覆われていたが日が高くなるとともに空は晴れ渡った。いやなことがあればいいことは必ずあるものだ。山荘の間を抜けて裏山を登りきったところで、記憶の片隅にあった岩山が姿を現した。同時にふっと鼻の奥に感じた硫黄の匂いが岩にマークされた黄色の道しるべと繋がってもう一つの記憶が蘇った。約40年前は九重全体が硫黄の匂いがとてもきつくて、この黄色い道しるべのペイントは溢れ出る硫黄で描いていると思い込んでいたことだ。近年は硫黄の匂いが減ったせいか草が生えるようになったらしい。視覚と嗅覚と記憶が活性化されて、息を切らしていたことなど吹っ飛んでしまった。最近ギャラリー気分で始めた『中山達也写真店』にこの原風景ともいえる山の写真を並べておきたかった。約30分、この広い『北千里浜』を走り回って撮影した。相棒の同級生画家も絵の具を取り出し飲んでいたミネラルウォーターで溶かしながらあっというまにスケッチを描きあげてじっとその絵を見ていた。
水を含んだ黒い火山灰がぬるぬるの粘土となって靴のソールに張り付き何度か尻もちをつきながらもなんとか下山、小倉に戻り同級生達とまる二日間飲む酒はなんともたまらずうまかったのは言うまでもない。

いつも眺めている南アルプスを上空から見るために今回は飛行機で九州入りして、帰りは京都に立ち寄った。さっそく写真店に並べたので、お時間ある時に、ぜひ!

中山達也写真店