3.25.2017

御射鹿池と県道191号

お店に出回るようになった春の到来を告げる野菜たちを丸ごと食べながらも、今年の冬は山の美しさばかりに目を奪われて雪で白くなった樹々をあまり撮っていなかった気がして、雪が解けない氷点下の大雪のち晴れの朝をずっと待っていた。
3月21日の夜、長野のいくつかの標高の高い場所のウエザーニュースで二日間の雪の後に朝方から太陽のマークが4つ並んだ。『カン!』
朝5時に目覚ましをセットして早々に布団に潜った。
依然として0度近い朝方、ファンヒーターのスイッチに手を伸ばし暖気が出始めるまでの数分、猫のポーズで背中を伸ばしてから一気に起動する。どんぶりに白いご飯を大盛りにして生卵と納豆をぶち込んで、ネギを5ストロークほど刻んでレトルトのアサリの味噌汁に入れる。これは朝食というより、貴重な朝方の光をどこまでも追いかけてもばてないようにするための栄養補給だ。
小さなカメラバックの機材の隙間に予備のソックスをねじ込んで、前日に黒ウーロン茶を入れていた小型の水筒を外ポケットに刺す。氷点下の早朝に車を出すときは凍りついたフロントガラスの霜を溶かすのにもこの水筒が役にたつ。猫舌と車にも優しくするために前夜に入れておくとちょうどいい湯加減になるというわけだ。iPhoneマックスボリュームで中村雅俊とデュエットしながら第一目標である夜明け前の白い御射鹿池に向かった。

大型バスと乗用車用の駐車場が整備されたばかりの御射鹿池には、まだ6時過ぎにもかわらず先客達がいた。みな大型の三脚を据えて狙っている。まだ薄暗くて手持ちで狙うにはしんどかったので191号線の御射鹿池の先の道路と雪の状況を見るために少し車を走らせて誰もいない雪道で車を止めて山の空気を吸った。除雪で道幅が狭くなった雪道を何度も切り返してUターンして明るくなってきた御射鹿池に戻った。三脚はいつも積んではいるが、センサーサイズが小さなSIGMA Merrillであれば手持ちであまり絞らなくてもピントのコントロールは可能だと体が理解しているので、小さなカメラを二つ首から下げて湖面が落ち着くのを待った。
湖面がいつも静かに落ち着いていて鏡のように写り込みがきれいな気分で訪れる人も多いと思うが、現実はそう甘くはない。農業用のため池で絶え間なく水が流れているので凍りにくい半面、実はけっこう水面は波が打っていて普通のため池に思えることもある。ただ、手のひらで目の周りを覆って注意深く湖面を見ているとスーッと風がおさまり湖面が落ち着く瞬間が訪れるのでポケットに入る保温ポットでコーヒーでも飲みながら30分も待てばきっと東山魁夷な気分の写真が撮れるはずだ。

写真はクリックでフルスクリーン推奨
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実は、御射鹿池に行く途中の191号線の山道の樹々がとてもすばらしい。特に秋に行った際に、あまりに見事な紅葉だったので、2時間ほど車を停めて夢中で歩いて撮影をした。今回の第2目標はその紅葉道路が雪でどうなるかを見ることだった。予想通り、氷の女王の魔法とはこういうことだと言わんばかりの凄まじい雪の華満開ショーだった。


車でサクッと走ってしまえば約5分ほどの短い区間ではあるが、電線・電柱で滅入ることも忘れてしまうほど季節折々で変化を見せてくれる。
今回は第3目標地点に急ぎたかったので、『忍法・運転しながらちゃんと撮る』の技を使った。この技には、小型軽量でデジタルバックにもひけをとらない写真が撮れるSIGMA Merrillとそれを片手で使い熟す手練、運転しながらでも手を伸ばせばフロントガラスの前にレンズを持っていける旧型のタイトな運転席を備えマニュアル2or3速であまりブレーキを踏まなくてもゆっくり下っていく軽トラ四駆・愛車スバルサンバーが必要になる。軽トラならカメラを下に振っても車体が映ることはない。

第3目標地点では、朝日を浴びてピンクに輝く雪の桜満開を狙うつもりだったが自分でも驚くような思いがけない写真が撮れた。
ということでさらに長くなりそうなのとお腹が空いたので次回に続くw