12.28.2010

墓地と摩天楼

1998年の夏に2週間、NYに写真を撮りに行った。
家電量販店で確認して最も早くシャッターが押せると確信した
ミノルタのおもちゃのようなCapios75と、ライカM6と、
FUJIのブローニー用の69GSW、
そして捨ててもいいようなぼろぼろのミノルタの一眼レフと
レフレックスの600ミリを用意した。

シートベルトの会社「TAKATA」の会報誌の撮影で
レンタカーでアメリカを縦断したときに、
高速道路で迷い、たまたま見た広大な墓地と摩天楼の風景をどうしても
写真に収めたくて、JFKの空港で思い切って白タクに挑戦してみた。
通常の空港からマンハッタンへのアクセスルートとは違う周り道ということで、
私の拙い英語で説明するのは気が引けたが、
墓地とスカイスクレイパーの写真を
車から撮りたい旨を話すとすぐに分かってくれて
正確な料金は忘れてしまったが、
少し色をつけただけで話がついた。
汗臭い車内で、ほんとうにちゃんとそのルートを走ってくれるか心配しながら
69にトライXを詰めた。
渋滞にぶつぶつ文句を言うドライバーに相槌を打ちながら、
太陽の角度がいい感じになってきたので、
ルートが合っていることを祈った。

車が流れるようになり、右側に突然例の墓地が見えてきた。
思った通り、、ランダムに立ち並ぶ無数の墓石と、
マンハッタンの高層ビルが見事にシンクロしていた。
世界の中心とされる街が巨大な墓標になっていた。
とっさに、距離計の目盛りでピントを合わせて、
標識の柱にかぶらないように数枚シャッターを切った。
もう、それで十分だった・・
また、いつか、、時間があるときは
墓地に足を踏み入れて狙ってみようと思った・・


その日から約2週間、最もスナップされることを嫌うニューヨーカー達に
ほぼノーファインダーによるワイドコンパクトとM6、
レフレックス600ミリとGSW69で立ち向かった。


この滞在から3年後、あの大惨事が起きてしまう。