12.24.2010

Jodie Foster

1997年にジョディフォスター主演の映画「コンタクト」が
ロードショーになるという話を聞いて、
講談社のFrau編集部の山内さんに、もし彼女が来日するのであれれば
記者会見でもいいから撮影させて頂けないかというお願いをしてあった。

どんなジャンルであっても、彼女がスクリーンに登場して2秒くらいで
完全に映画の世界に引きずり込まれてしまうのである。
彼女が外人なおかげで、テレビでバラエティに出て、
自分のプライベートをさらすのを
見ていないおかげもあるのかもしれないが、
彼女の仕事(映画)を見ることが、大好きなのである。
そんな彼女を生で一目見ておきたかったというのが本音である。

マスコミ各社による囲みの写真撮影は
たしか帝国ホテルだったと記憶している。
現場に着くと、カメラマンたちが20人くらい既に集まっていた。
記者会見のコーディネーターとおぼしき人物が、
われわれカメラマン達に向かって、
「撮影はどこがいいですか?」と聞いてきた。
だれも返事をしないので私はここにしましょうと、
森を描いた大きな絵の前を指し示した。
用意したカメラはハッセルとナショナルのストロボ480。
当時はまだ積層バッテリーである。
記者会見の多くは35ミリの望遠で、被写体が笑うたびに機関銃のように
フラッシュが焚かれ、だれが撮っても似たりよったり、、、
しかも、250分の1秒で撮っていても他人のストロボが同調するような
おそろしい状況になるのである。
私は、ここだけの話、ブックに入れるための
ジョディのポートレートを撮りに来たのである 。
ハッセルに150ミリを付けて、ストロボ480のヘッドを
天井バウンス用に上向きにたてて、
そのストロボにバウンスも兼ねて全紙のケント紙を4分の1に折って
被写体に垂直になるようにパーマセルでしっかりと固定した。
こういうホテルの空間はブラウンの壁紙が多いため、
ストロボをバウンスして使う場合は、派手な発色のフィルムを使うと
シャドウに不自然に色が乗りすぎることが多い。
そこで良く使っていたのが、ある意味色に鈍感なEPNで、
同じような状況の撮影で、
いい感じにまったりアンバーをかけた状態になるのを体が覚えている。
まわりにいるカメラマンに露出を計ってくれなどと
無粋なことを言えるはずもなく、
ストロボのパワーをフルにして絞りを勘で8に設定。
誰もいない立ち位置に向かってポラを切った。
天井が思ったより低いのが幸いして増感すれば8でいけそうだった。
予想通りカメラマンはどんどん増えて30人以上になってきていた。

必殺技を出すことに決めた。
実はストロボに貼ったケント紙は
アイキャッチにも正面光の補助にもなるが
それほど大きなものにしたのは理由があった。
予め用意していた太いマジックでケント紙にその場で書き込んだ。
「Welcome to Japan!!
I am a Big Fan of you since "Taxi Driver"
So happy to see you!
Enjoy Japan! Thank you!!」
まわりの連中がじろじろ見て、そうとう恥ずかしがったが
本当なんだから、しょうがない。。。

立ち位置できっちり150ミリで上半身を狙える真正面に座って陣取った。
距離的には通常の囲み撮影よりは近い気がしたが、
150より長いハッセルのレンズは当時は持っていなかった。
この前線は死守しなければならない。
私より前に陣取る猛者なカメラマンがいなかったことも幸いした。
カメラマン達が私のラインに大勢並んだので、
もう前線を下げられる心配は無くなった。

ほどなく彼女は登場した。
コーディネーターに促され私の目の前に立った彼女は
ハリウッドスターというよりも、聡明な普通の女性だった。
伏せていたカメラを構えた。
すぐに彼女はケント紙のメッセージを見て笑ってくれた。
頂きである。
私は丁寧に一度シャッターを切って、
ポケットに入れたあったマガジンと換えながら
ケント紙ごしに彼女を見ると、ずっと笑いながら私を見ていた。
なぜなら私が、「撮ったらどけよ!しゃがめよ!・・」
などと後ろのカメラマン達にののしられながら
どつかれていたからである。
いくらどつかれようが平気である。
ストロボ光だけでとっているのでぶれはしない。
ジョディを撮るのにテストロールを作らないわけにはいかない。
切り現なんてとんでもないのである。
こころの中で「まだこれからだよ」
といいながら笑顔で本番ロールである。
12枚、ストロボのチャージを待ちながら
手巻きのハッセルで丁寧に撮っている間、
約2分くらいだろうか。。申し訳ないが完全に二人の世界だった。
フィルムが終わると、彼女はす〜っと目の前から居なくなった・・
囲み撮影終了である。

後日、掲載誌が送られてきてびっくりした。
二人の世界の写真が表紙になっていたのである。
とりたててフィルムの納品時に大騒ぎしたわけでもないのに、
既に別のカメラマンが撮影してあった
某大物女優のカバーの座を奪ったのである。

記者会見の何気ない写真も、
きちんと目を通しいてくれたことに感動したのを覚えている。
さすが編集長である・・・
メリークリスマス

Hasselblad 500CM 150mm F8 1/250 EPN