2.10.2011

宮沢和史

ハッセルのデジカメで撮影してきたポートレートのモノクロデータを
等倍表示にして、瞳の血管の一本一本まで描写されているのに驚きながら、
以前撮った写真のことを思い出した。

たしか1998年頃、既に廃刊となっている講談社のViewsという雑誌で
宮沢和史さんを撮影させて頂いた中の一枚である。
履き古した皮のワークブーツでバイクに乗り
一人だけでスタジオに入られた宮沢さんを見て、
すぐに目を撮りたいと思った。

2段増感したトライXのプリントが紙面になったものでも、
目の血管一本一本がきちんと写っている。
もちろんレンズ性能や、プリントや印刷時の曖昧さなどで、
ハイエンドなデジタルカメラのように、
引きの写真から目の血管を確認することは難しいかもしれないが
きちんと狙いをつけて撮影をすれば、
ある意味デジタルのモンスターなピクセルは必要ないのかもしれない。

ピクセル単位ごとに調整が可能なことで、
どうにでもできてしまうデジタルな写真よりも、
非常にコントロールしにくいアナログの写真のほうが、
言葉にはしにくい写真の力を帯びているようにも感じる。

デジタルカメラは進化を止めることはないだろうが、
デジタルという道具を使っても
「写真」を撮っていきたいと思っている。

モノクロネガとして生まれた写真がカラーとなりポジが生まれた。
そういう変革のタイミングで写真を撮って生きてきた人たちは、
それをどんなふうに感じていたのだろう。。
インターネットという大きな波とともに生まれ落ちたデジタル写真は、
周辺に大きな変化をもたらしたが、
私の中の「写真」が、今後どうなっていくのかとても楽しみである。

Mamiya RZ67 トライX +2 イルフォード5号