2.19.2011

母の一言

先日、雑誌Numberの取材の際に、
別府の「一力」で美味しいホルモンを頂いていたら
母親から電話が入った。
無事退院したということで、久しぶりに楽しそうな声だった。
入院中に郵送していた祖父の眠る靖国神社のお札と写真のお礼だった。
「お札、名前まで入れてくれてありがとね〜
神社のポスターも、あんなにたくさん、ありがとね〜」
「ん?ポスター?あ〜あれ写真だよ、、俺が撮った。。」
「あ〜あれ、あんたが撮ったんかね?ひぇ〜すごいね〜。。」
どうやら私がインクジェットでプリントしたものを
ポスターと勘違いしたようだった。


母は時々、面白い事を言う。

大学生の頃、原宿でバイトをしていた先で、
雑誌「オリーブ」の”原宿で働く素敵な彼”という特集で取材された時に、
その記事の「原宿の古着屋でよく服を買います」というのを見て、
当時の狭いアパートの黒電話に、母が泣きながら遠距離電話をかけてきた。
「たつや、、ごめんね。。あんたに古着ばっか着せて、、
いまだに古着着る癖があるのは、お母さんのせいやね〜
ごめん。。ごめん。。ほんとにすまないね〜」
確かに男4人兄弟の3号機である私は、
幼い頃はほとんどの服が兄の「古着」だった。
しかも3人が着るとさすがに着れなくなってたようで、
末っ子を見ると、新しい服になっていた。
4人兄弟の中で、私がいつもいちばん「古着」を着せられていたことを
母はどこかで気にしていたのかもしれない。

30歳を過ぎて独立して、母が東京に遊びに来た折、
私が履いていたコムデギャルソンの縮絨素材で出来た、
サイドの部分の余った生地を山折にして縫い込んであるような
デザインのパンツを見たときも。。。
「あんたは、ちゃんと仕事してるのに、
そうやって古いものを今でも縫ってはいちょるんかね。。みっともない、、
ごめんね〜昔、おかあさんがお古ばっか着せてたせいやね〜
ごめんね。。。ごめん。。(涙)。。」

なんというか、こまかく説明するのも面倒だし、
おとなしく涙を流してくれてるくらいがいちばん可愛いので
あまり突っ込まないようにしているが、
なんとも胸がきゅんとする一言である。

普通にプライベートで撮った写真を
ポスターと勘違いして喜んでくれるなら、
親孝行でいくらでも写真を送ってあげようと思う。

祖父が眠る靖国神社のなんちゃってポスター

Hasselblad H3DⅡ-39 ISO50 35mm