6.20.2011

NUDE

1992年頃、飲んでばかりいたスタジオマン時代にたまには作品撮りでも。。と思い立ち、
某一流商社に勤めていた体の線が綺麗な知り合いにヌードモデルになっていただけないか、
だめもとでお願いしたら、あっさりと快諾いただいて、スタジオフォボスに来てもらった。

当時、荒木さんの影響もあって、日本の写真界では私写真というくくりで、
日常の空間で撮影されたようなある意味どろどろしたヌードが数多く発表されていた時期で、
そういう写真に飽き飽きしていたことと、
脱いでくれるとは言え、自分とはそういう関係ではない素人の聡明な女性の裸ということで、
御本人にプレゼントしても、嫌な顔をしないような「綺麗なもの」にするつもりだった。

女性の裸をスタジオで撮るのは、初めてだったのだが、
無粋なことに、いきなり脱いでくれとお願いした。

世界のほとんどの場所が写真に撮りつくされたといえども、
実は、女性の裸などというものは、秘境に匹敵すると思っている。
グラビアなどの裸の写真で見慣れているとは言っても、
セックス以外の目的で目の前に実物が登場すると、初めはさすがにどきどきする。

Rolleiflex2.8GX プラスX
初めのうちは、恥ずかしさも当然あり、どうしていいかわからないヒールだけを履いた
すっぽんぽんの女性に、あ~だこ~だと指示をしながら撮っていたが、
何本か撮り、ローライのフィルムチェンジをする間に、
モデルの女性は、白ホリのヒールで汚れた床を雑巾で拭くようになった。
しかも、足を開いて大胆にごしごししている。
「床は写らないから、気にしないでいいよ」と言おうかとも思ったが、
何も言わなくても、自らが汚した床を、裸で写真を撮られているにもかかわらず、
普通の会話をしながら、掃除をする彼女の育ちの良さと、適応能力の早さに驚いた。
あわててスタジオの鍵を確認したのを憶えている。

もう彼女は服を着ている時と何も変わらない感じで、体が動くようになっていた。
カメラを35ミリに切り替えて、世間話をしながらシャッターを押した。
白ホリの大きなスタジオという、おそらく経験したことのない真っ白な非日常空間で、
普通の会話をしながらあっけらかんと、手をあげたり、歩いたり、飛び跳ねたりするさまに、
女性はやっぱすげえな。。と。。軽くショックを受けた。

NikonF2 プラスX
思った通りの素晴らしい肉体だった。
男性の顔が大好きだが、女性の普段見えないもう一つの貌(かお)も面白い。
せっかくのチャンスなので、じっくりいろいろ撮らせていただくつもりだったが、
あまりの普段と変わらない彼女のスタンスに拍子抜けを食らった気分でサラッと撮影を終えた。

後日、写真のワークショップでステージ一杯に巨大に投影されて、
写真評論家や美術評論家に「綺麗なだけで、写真的にはつまらない」
というようなことを言われ、マイクを取り上げられるまで噛み付いてしまったが、
彼女にプリントを渡すことが出来ただけで、私としては充分だった。

NikonF2 プラスX